白無垢伝統文化
神社で結婚式を。「神前式」の1日の流れとその魅力について詳しく解説
どんな結婚式にするかを決める前に、まず衣装を洋装にするか和装にするかで悩まれる花嫁さまも多いのではないでしょうか。実は和装を選んでも教会で結婚式は挙げられますが、洋装を選ぶと神社で結婚式を挙げることはできません。まず、結婚式の種類を知ったうえで、和装婚の主流である神前式がどんなものかを押さえましょう。
結婚式・4つのスタイル
結婚式には主に次の4つのスタイルがあります。結婚式を挙げることが決まったら、まず自分たちはどのスタイルで結婚式を挙げたいかを考えましょう。
・教会式(きょうかいしき)…教会で神に愛を誓う洋装の挙式。誓いの証に指輪を交換する。
・神前式(しんぜんしき)…神社・神殿で神に愛を誓う和装の挙式。基本的に列席者は両家の親族のみ。
・人前式(じんぜんしき)…場所や形式にとらわれない自由な結婚式。洋装・和装を問わず、列席者に愛を誓う。
・仏前式(ぶつぜんしき)…お寺で仏様やご先祖様に結婚の報告をする。主に和装。
神前式はいつごろ始まった?
白無垢での和装婚にあこがれている方は、「神前式」を考えている方が多いのではないでしょうか。神前式とは、日本の伝統的なしきたりに沿って、神社または神殿で結婚の儀式を行うウエディングスタイル。現在の形式の原型は、1900年に行われた大正天皇(当時は皇太子)の結婚式といわれています。これを記念して、翌年に日比谷大神宮(現在の東京大神宮)で一般の人々に公開挙式が行われました。
明治時代までは嫁入りの儀式(婚礼)が3日間かけて新郎の自宅で行われていましたが、結婚式をより簡単な儀式として挙げられるように神前結婚式が登場したのです。
普及当時、神前式は富裕層が行うものでしたが、次第に広まり、昭和30年ごろには全国の神社で行われるようになりました。
神前式では、新郎は紋付袴、新婦は白無垢や色打掛など、ともに和装を身にまといます。教会式や人前式との大きな違いに、
「結婚式は家同士を結び付けるもの」という考えがあります。式中は神社の中で神事をおこなう斎主(さいしゅ)や巫女(みこ)が両家の縁を結ぶ役目を果たします。
式前の流れ
式の当日の流れを知っておくと、新郎新婦もゲストも安心ですよね。まず、式が始まる前の流れを紹介します。
挙式の2〜3時間前
・支度室にて新婦のヘアメイク・着付け
・別室にて新郎のヘア・着付け
※支度室がない神社の場合は、近くのホテルや美容院などで行うこともある
挙式の15〜30分前
・控え室に親族が集合する(両家一部屋)。新郎新婦も控え室に移動し、両家の代表者が一人ひとりの続柄と名前を紹介し合う
・会場スタッフや巫女さんから、挙式の流れや所作の説明がある
挙式の5分前
・親族以外の挙式列席者は挙式5分前に境内に到着するようにする。控え室が利用できるのは親族のみの場合が多い
神前式の流れ
式のなかで新郎新婦が関わる動作については神社で事前に教えてくれますが、その意味までは説明がないこともあります。大切な結婚式だから、神前式がどのような流れで行われ、どのような意味があるのかを知っておきたいですよね。神社により多少違いがありますが、以下で紹介する12のステップが基本になります。
1.参進の儀(花嫁行列)
2.昇殿
3.修祓(しゅばつ)の儀
4.祝詞奏上(のりとそうじょう)
5.三献の儀(さんこんのぎ)
6.指輪の交換
7.誓詞奏上(せいしそうじょう)
8.玉串奉奠(たまぐしほうてん)
9.神楽奉納
10.親族盃の儀(しんぞくはいのぎ)
11.斎主一拝
12. 退場
それぞれ詳しく説明します。
1. 参進の儀(さんしんのぎ)
斎主と巫女の先導によって、新郎新婦、両親、親族、友人の順に並んで本殿に向かいます。神社によっては紅い和傘をさしたり、雅楽の演奏があり、厳かで格調高い雰囲気に気持ちも高まります。「花嫁行列」とも呼ばれます。
2. 昇殿
神職の中でもっとも偉い斎主、巫女、新郎新婦、両親、親族の順に拝殿に入場します。神さまを前にして、向かって右が新郎側、左が新婦側になるように座ります。
3. 修祓の儀(しゅばつのぎ)
「修祓(しゅばつ・しゅうふつ)」とは心身を祓い清めるお祓いのことです。みな一緒に起立し、参列者全員が斎主による祓詞(はらいことば)を受けます。
4. 祝詞奏上(のりとそうじょう)
斎主が神に新郎新婦の結婚を報告し、二人の幸せが末長く続くようにお祈りをします。
5. 三献の儀(さんこんのぎ)
小・中・大3種類の盃で新郎新婦が交互にお神酒を飲み交わし、夫婦の永遠の契りを誓います。「誓盃の儀(せいはいのぎ)」とも言います。
・一の盃(小) 新郎→新婦→新郎
・二の盃(中) 新婦→新郎→新婦
・三の盃(大) 新郎→新婦→新郎
というように、「三種類の杯」でそれぞれ「三回ずつ」合計「九回」飲むため、「三三九度(さんさんくど)」とも呼ばれます。
飲むときは1、2口目は口をつけるだけで、3口目に飲むのが作法とされています。夫婦で何度も盃を交わすことで、堅い縁が結ばれます。
6. 指輪の交換
新郎から新婦へ、新婦から新郎へ、お互いの薬指に結婚指輪をはめます。もともと神前式にはない儀式ですが、希望するカップルが多くなった昭和の半ば頃から取り入れられるようになりました。指輪の交換の有無は選択できる神社が多いようです。
7. 誓詞奏上(せいしそうじょう)
新郎新婦が神前で夫婦になることを誓う誓詞(せいし)を読み上げます。
8. 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
新郎新婦が神に玉串と呼ばれる榊(さかき)の枝を捧げ、改めて「二拝二拍手一礼」します。「玉串拝礼」とも言います。
●作法
①右手で榊の根元、左手で先の方を下から支え、胸より高く持つ。
②玉串(榊)を立て、左手を下ろして両手で根元を持ち、祈念する。
③右手を離して、玉串を下から支える。
④玉串を時計回りに回し、根元を神様に向けて、神様に捧げる。
⑤二拝二拍手一拝する。
9. 神楽奉納(かぐらほうのう)
巫女が神楽に合わせて、夫婦となった2人の門出を祝い、舞を奉納します。神社により行われない場合や、三献の儀の後に行われる場合もあります。神様に献上する初穂料とは別料金になります。
10. 親族盃の儀(しんぞくはいのぎ)
「親族固めの盃の儀」とも呼び、両親をはじめ両家の親族が順にお神酒を飲み干します。両家が親族となるための儀式です。
11. 斎主一拝(さいしゅいちはい)
斎主が無事に式が執り納められたことを神さまに報告します。
12. 退場
斎主、新郎新婦、仲人、両親、親族の順番で本殿から退場します。
その後、集合写真の撮影などを行います。執り行う神社により異なりますが、これらの式がひと通り行われるのに要する時間は20分~30分程度です。
写真撮影はしても良い?
神聖で絵になる場面が多い神前式。思わずたくさん写真に収めたくなりますが、神殿の中での写真撮影には制約があります。斎主が祝詞を奏上しているときやお祓いをしているときは写真撮影は禁止されています。三献の儀(三三九度)や指輪の交換は撮影が許されているところも多いようですが、神社によってはカメラの位置が決められていることもあります。写真撮影をする場合は事前に神社に確認をしましょう。唯一神殿の外で行われる参進の儀(花嫁行列)は、神前式ならではの写真が撮れるシャッターチャンスです。
神前式の魅力とは?
家族になる喜びがある
神前式の魅力は、白無垢を着ることで特別感を味わえるだけでなく、「家族・親族との絆」を感じられること。教会式と神前式の大きな違いもそこにあります。教会式では新郎新婦が夫婦の愛を誓う「誓いのキス」の場面がありますが、神前式は親族間で同じお酒を飲み交わし、絆を強める「親族盃の儀」があります。あらかじめ着席して新郎新婦を待つのではなく、入場からともに参列するため、神前式は家族や親族からも喜ばれることが多いのです。
教会挙式よりもリーズナブルになることも
神社で行う場合は、初穂料(神社に奉納する金額)約5万〜20万円を奉納します。雅楽演奏は別料金(5万円〜)になることが多いので、事前に神社に確認しましょう。加えて、衣装代とヘアメイク・着付け代などがかかります。挙式プランが用意されている神社もあり、安価に押さえることができる場合もあります。
また、神前式が挙げられるのは神社だけではありません。神殿が備えられたホテルや結婚式場もあるので、披露宴も同時に開く場合は候補に入れるのもよいでしょう。
友人の参列がOKな神社も
神前式の参列者は基本的に親族のみですが、大きな神社や神殿であれば友人も参列できるところもあります。事前に挙式予定の神社に確認しておきましょう。また拝殿内に入れなくても、外で参列を見守ってもらうこともできます。
神前式に向くのはこんな人
☑︎白無垢・紋付が着たい
☑︎家と家の結びつきを大切にしたい
☑︎日本の伝統文化を経験したい
☑︎神社で結婚式を挙げたい
☑︎参列者は親族・近親者の少人数
神社での挙式後はどうする?
神前式が終わったら集合写真を撮影し、神社の敷地内の会館で披露宴をしたり、料亭やレストランで会食をするのが一般的になっています。境内での集合写真は思い出に残りますので、ぜひ撮影してもらいましょう。
また、挙式と披露宴を別日程にされる花嫁さまも多くいらっしゃいます。挙式は神前式で行い、披露宴は友人を招待してドレスを着用されるのもおすすめです。
神前式で一生の思い出を
式の流れが覚えられるか不安もしれませんが、心配はいりません。たいていの神社(式場)では当日の朝にリハーサルを行い、式本番も神職や巫女がサポートしてくれます。神聖な神社での結婚式で、特別な白無垢を着ることは、一生の思い出になることでしょう。
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